(「深海遙」名の著書)デビュー当初の村上春樹は、柄谷行人や蓮實重彦、加藤典洋らの批判に晒された。著者は、そうした批判を反批判し、村上春樹の登場にエールを送りつつ、彼の課題についても言及する。
ニヒリズムの黄昏に包まれた現在の生はいったいどんな歌を歌うことができるだろうか──。絶対的観念の終焉を追認した初期3部作から、倫理の宙吊りに耐えて単独生活を営む主人公を描く現在まで、村上春樹のテクストの内的構造を分析する。
【目次】
はしがき
I 鼠と「僕」の一九六〇年代──『風の歌を聴け』から『羊をめぐる冒険』へ
糸井重里の「変節」・村上春樹の「怒り」
羊の正体と夏の光
鼠の病い 探索と発見のイロニー
II 「人工知能」の冒険──『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』
生きることを限定して
欲望する「人工知能」
強いられたイメージとしての街
III 排閉の論理を越えて──死者と『ノルウェイの森』など
「コミュニケーションがないんだ!」
欠如を欠如として
単独生活スタイル
IV ニヒリズムの黄昏にて──『パン屋再襲撃』から『ダンス・ダンス・ダンス』へ
純粋な穴掘りに耐えられるか
特権的ニヒリズムの崩壊
氾濫する数字の「意味」
危ういダンスステップ
四六判、ハードカバー、1990年、青弓社刊
著=深海遙
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