- マルクス・ガブリエル 『倫理資本主義の時代』 [書評]
資本主義と倫理のリカップリングは可能か。
「訓練を積んだ哲学者」が倫理的問題を解決できるのか。
ガブリエルさんは西欧近代主義的思考に陥っていないか。
- 「地獄への道は善意で敷きつめられている」
「善意」は人々を幸福に導く――ふつう、私たちはそう思う。逆に、「悪意」こそ人々に不幸をもたらす、と。
なのに、「地獄への道は善意で敷きつめられている」とは、いったいどういうことか
- 追悼 アラン・ドロン
アラン・ドロンの訃報が届いた。ハリウッドの二枚目にはない美と影を持ちあわせる名優だった。時代を共有させてもらった俳優に合掌。
- 老人と海
三島由紀夫は、自分がこの世に生まれ落ちたときの記憶を、小説に書いた。だが、私は、出生時より早い段階のシーンを記憶している……。
- 橘玲 『テクノ・リバタリアン』 [書評]
テクノ・リバタリアンは、ほんとうに「世界を変える唯一の思想」なのだろうか?
「死」は技術的な問題にすぎないのだろうか?
彼らの考える「自由」とは、ほんとうに「グローバル」のスタンダードだろうか?
- 西行 「何事のおはしますをば知らねども かたじけなさに涙こぼるる」
【遺された言葉たち⑥】 西行の目の前に「おはします」のは、山や森、滝であり、ときに神社、お寺だったかもしれない。いやもっといえば、万物である。
- 富岡町慰霊碑 「原発事故さえなかったら……」
新しく建立された富岡町の慰霊碑。そこには、「原発事故さえなかったら……」の想いが刻まれている。
- 『隆明だもの』と吉本さんの想い出
吉本隆明さんの長女、ハルノ宵子さんが父と家族を描いている。
触発され、晩年のインタビューを含め、吉本さんについての想い出を書き残そう。
- 「疎外」ということ 『暇と退屈の倫理学』書評 (下)
『暇と退屈の倫理学』 書評 (下)
半世紀少し前には、流行語のように使われていた哲学用語「疎外」。今ではあまり見聞きしない。
國分功一郎さんは、忘れられた「疎外」概念の復権を訴える。心意気、よしとしたい。ただ、そのとらえ方には、少なからず疑問を覚える。
「疎外」とは何であり、21世紀の今、その概念はどう活かせるのか――。
- 國分功一郎 『暇と退屈の倫理学』 書評(上)
若者によく読まれる哲学書だそうで、なるほど好感がもてる。ただし、〝暁の二段階論〟など、西欧近代的知の枠組に依拠していることに疑問を感じる。あえて、その点について触れてみる。
- 『パーフェクトデイズ』 PERFECT DAYS
東京・渋谷区の公共トイレ清掃員の生活が淡々と描かれる映画に、こころを静かに動かされた。そこには、日本列島の労働観の一端が反映されている。
- 小林秀雄「女は俺が成熟する場所だった。書物に傍線をほどこしてはこの世を……」
書物に傍線をひいて世界を理解しようとするのは、観念の自然過程にすぎない。
これを「小癪な夢」として壊されたとき、人はなにごとかをつかめる。
- 武田泰淳「お前も気の毒な男さな。食べなければ、餓死するんだし、食べれば……」
【遺された言葉たち】③ ~刻まれ、今も消えない言葉~ 「食べ・生きる」ことが招く「罪」と「負い」
- 与謝野晶子「清水へ祇園をよぎる桜月夜こよひ逢ふ人みなうつくしき」
【遺された言葉たち】② 二十歳前後でこの歌に出会ったころ、私は「こよひ逢ふ人みなうつくしき」との心情をとても抱けない情況にあった。
- マルクス「君は愛をただ愛とだけ、交換できるのだ」
【遺された言葉たち】① ~刻まれ、今も消えない言葉~ 君は愛をただ愛とだけ、信頼をただ信頼とだけ、その他同様に…
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- ジャズ喫茶 ぶらり寸描(5) ブルーライツ(枚方)
自分で建てた50畳の空間に、自家製巨大コンクリートホーンの深い音が響く。
音楽の愉しみを周囲の人と分かちあう、素晴らしきセカンドライフ!
- 正伝寺 借景庭園にて
京都・西賀茂に位置する正伝寺。かつてデヴィッド・ボウイの酒のCMで舞台ともなった、知る人ぞ知る庭園。今回再訪し、素晴らしさをより強く印象づけられた。その魅力とは……。
- 森 大翔 「オテテツナイデ」
羅臼出身、19歳のファーストアルバム。超絶技巧のギターと詞、歌唱が融合する世界。こんな感性、どのようにして生まれたのだろう。
- 松本輝夫 『言語学者、鈴木孝夫が我らに遺せしこと』
人間中心主義的な西欧(大陸)の世界観とは一線を画す、日本文化や日本語を世界に広めるべき、と訴える言語学者鈴木孝夫さんの業績・生涯をまとめた好著。
- 村上春樹 『街とその不確かな壁』 [書評]
同世代表現者として評価してきた村上春樹さん。その新作に覚えた“ものたりなさ”について考えてみる。① 「愛のかたち」 ~「純愛の特権性」~ ② 壁に囲まれた「街」の切実さについて。
- 柄谷行人 『力と交換様式』 [書評]
集大成の労作だが、西欧近代的知の限界が……。
① 交換様式Dの内実、② 交換における「力」の正体、③ D(ユートピア)の「到来」――核心の3点について批評してみる。
- ジャズ喫茶 ぶらり寸描(4) DANTE (盛岡)
【偏愛名曲】 今は間口を広げたのだろう、ジャズ喫茶と気張らず、ポップス系のレコードも流す、暖かな雰囲気の店。味…
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- ジャズ喫茶 ぶらり寸描(3) ペッパー(湯布院)
秘湯の趣き漂う湯平温泉での取材を終えタクシーに乗ると、ドライバーさんから意外な提案が……。
そして、湯布院でぶらりと入った店ではジャズが流れていた。
- ジャズ喫茶 ぶらり寸描(2) OCTET(山形市)
駅のほど近くに位置しながら、ひっそり佇む空間は、マスターの人柄が滲み出ているよう。
- ジャズ喫茶 ぶらり寸描(1) ロンド(秋田市)
秋田市内の「川反(かわばた)」繁華街には、すっかり夜の帳が下りていた。そこを外れてひっそり佇むジャズ喫茶「ロンド」は、1968年開店という。明治中期に建てられた土蔵を改装した店内にはビル・エヴァンストリオの演奏が……。
- 追悼 ジャン=リュック・ゴダール
【雑記帳】 滑稽でもの哀しい物語『気狂いピエロ』/観客に話しかけるフェルディナン/「コカ・コーラ」と「レーニン…
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- 「あなたの宗教は?」と聞かれたら
【雑記帳】 日本列島人は「無宗教」なのか?そもそも「宗教」という概念が欧米とは異なる。列島文化を動かすオペレー…
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- 『平成転向論』を読む
古層に埋もれていたはずの「転向」という問題を再浮上させた「平成の転向」論。そこに陥穽はないだろうか――。
- 山下洋輔トリオ『DANCING 古事記』とA君
7月、「村上春樹presents山下洋輔トリオ再乱入ライヴ」があった。
遡ること53年前、その原型となるライヴが「貫徹」され、レコードが制作された。
あの時代「何かにつかまれてしまった」者たちとレコードのちょっと苦い物語。
- 『村上春樹のタイムカプセル 高野山ライブ1992』
30年前、高野山で開かれた討論の記録。パネラーだった「吉本隆明教室」の4人とその後。
- ウクライナ侵攻 ロシアの「大義」と「陰謀」の系譜
「目的は手段を浄化する」というネチャーエフの陰謀主義。それと、ツァーリズム、大義の3つが、互いにからみあいながら形成されるロシアの政治的な特殊性。
- 「立派で美しい大義」が「悪」に転倒する逆説
いまからちょうど半世紀前のこと。若者たちが惹き起こした、大きな社会的事件が二つあった。どちらも、陰惨な悲劇である。その一つが、早稲田大学でのリンチ殺人事件。加害側当事者の一人、自称「アクティビスト」の辻信一さんの発言から考える(『彼は早稲田で死んだ』)。
- 関係の絶対性
秩序にたいする反逆、それへの加担というものを、倫理に結びつけ得るのは、ただ関係の絶対性という視点を導入することによってのみ可能である。
- 斎藤幸平と先崎彰容
若い世代の優れた両論客だ。かつての政治と文学の論争のような地平にとどまることのない、研究と活動の豊かな進展に期待したい。
- ありがとう Arigato
【雑記帳】 ~「ありがとう Arigato」 語源と、意味の膨らみ、そして可能性~ 「ありがとう」。おそら…
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- 「世情」 中島みゆき
【偏愛名曲】 「世情」 作詞・作曲:中島みゆき、1978年 ◯ユーミンと中島みゆき 荒井由実(のちの松任谷由…
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- ラジオ体操の復活
【老いについて(1)】 ◯スイミングプールにて 時間のとれる日は毎夕、ジムで泳いでいる。 その時間帯、子ども…
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- 老講師
【忘れがたき人(1)】 ○気になる女の子 小、中、高と、当然のこととして、公立の学校に通った。 塾や予備校と…
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- 「長い髪の少女」 ザ・ゴールデン・カップス
【偏愛名曲】 「長い髪の少女」、1968年作詞:橋本淳、作曲:鈴木邦彦 ザ・ゴールデン・カップスの歌である。…
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- 「枯葉」 ステファン・グラッペリ
【偏愛名曲】 ★楽曲「枯葉」 Les Feuilles Mortes 1947年作詞:ジャック・プレヴェール、…
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