“奪いあい"と“生きづらさ"をもたらす「労働」。
だが今日の「労働」は普遍的なシステムではない。日本列島に定着してから、たかだか百年少々の歴史が経過したのにすぎない。
「ワーク」と「ライフ」、「生産」と「消費」、「苦役としての労働」と「遊び」といった二項対立構造の止揚が求められている。ヒントは列島古来の「はたらき」観に―。
西は、創世記、キリスト教、古代ギリシャ哲学から、カント、ヘーゲル、マルクス、バタイユ、ヴェイユを経てリフキンまで。
東は、安藤昌益、本居宣長から、岩井克人、落合陽一まで。
古今東西の労働観と対話しながら、「労働」止揚の理と方向を示す。
Ⅰ 「労働」のいま
なぜ「労働」を問うのか
差異化に押し潰される
「労働」が強いられる転倒
「労働」を蔑む論
王様と奴隷に分裂する不幸
Ⅱ 「労働」観の歴史
苦役としての労働 旧約聖書・古代ギリシャ
禁欲勤勉思想の誕生と貨幣の蓄積
「人格の賃貸借」という苦肉策 カント
条件を付ければ「人格」は守られるか ヘーゲル
「外化」、「自己化」と「疎外」
奪いあいを「相互依存」する市民社会
雇用契約における「精神化」の挫折
市民社会における「労働」の転倒
「やられたら、やりかえせ」 カント道徳の破綻
「自由」の追求があくなき開発、征服を呼びこむ
Ⅲ マルクスの喝破と躓き
人間が貨幣の手段に
ぼくと君は「相互争奪の関係」
「労働における疎外のかたち」
「認識論上の切断」で捨られたこと アルチュセール
疎外論と物象化論 廣松渉
「本質からの疎外」論
受苦的存在をめぐる揺れ動き
「生産は消費であり、消費は生産である」
資本制における生産と消費のかたち
「労働力の再生産」という逆立ち
「分業」や「稼ぎとしての労働」の止揚
株式会社・協同組合
切り捨てられた「サーヴィス労働」
Ⅳ 二〇世紀の「労働」論
経済学の「コペルニクス的転回」 バタイユ
贈与論が招き寄せる困難
「労働」の両義性
「労働」と至高性 禁止と侵犯
至高性と蕩尽につきまとう影
一杯のワイン その消費と生産
「非―知」 西欧知の到達点と悲劇
贈与論からの突破 関係の変革
苛烈な資本制批判! 「投機的な意志が地球を食い物にする」
工場労働体験でみえたこと ヴェイユ
「必要性」世界への閉じこめと誘惑
なぜ労働には霊性があるのか
労働の垂直的救済と課題
協働、労働の交換
「奴隷労働」を脱し「地球の主人」をめざす転倒 アレント
ヴァカンスと「労働の終焉」 ボードリヤール
ハイパー現実の「消費社会」
「再生産労働しか存在しない」?
「マルクス主義」葬送の道連れにされた「労働」
「お前はすでに死んでいる」
ユートピアを措定する〝逆「進化論的思考」〟
テロリズムへの傾斜 「九・一一」
「消費」の質を問う論 見田宗介
「三時間しか働くな」 反「勤労」論理 ポール・ラファルグ
ワークシェアリングと四時間 反「勤労」論理 ラッセル
「マルクス主義フェミニズム」と「家事労働」
「労働力の再生産」なんてない!
Ⅴ 日本列島の「はたらき」観
「労働」はたかだか百年少々のスタイル
「労働」の誕生以前
「労働」の誕生と貴賤観
安藤昌益の自然観・世界観
存在することは「はたらき」
「互奪」から「互生」へ
Ⅵ 「労働」から「感(はたら)く」へ
存在、贈与、はたらき
第三の価値「心的価値」の交換
雇用制度からの離脱
デジタルテクノロジーが促す「労働」止揚
「労働」から「感(はたら)く」へ
おわりに
引用・参考文献
四六判、ペーパーバック、536ページ、税別2700円、2018年刊、
インプレスR&D NextPublishing Authors Press
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